寡黙な御曹司は密かに溺愛している

お互いに自分の作品を無心に作っていれば、会話は少ないだろう。

そう思ってやってきたカーナビで見つけた、うちから車で三十分の市街地から離れた陶芸体験。

当日だから断られるのを承知で電話すると、たまたまキャンセルが出たからと体験出来ることになった。



「……お前、不器用だな」

ろくろを回すなんて簡単。
そんなふうに思ってた私は、浅はかだった。

陶芸教室に着くと早速説明を受け、課長と二人並んでいざ開始。

子どもでもできますなんて書いてあるものだからタカをくくっていたら、電動ろくろに翻弄され、失敗ばかり。

私がこんなに失敗ばかりなんだから、課長だって、とチラ見をするとすごく綺麗にろくろを回していてなんだか悔しい。

そんな私に課長が更に一言、余計なことを言うもんだから負けるもんかとメラメラと闘志を燃やしていると、課長がそれを見てクスクスと笑っていた。