寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「いえ、私こそあんな風に口パクで失礼しました」

「教えてくれて助かった」

「いえ」私がそう言うとまた会話が止まる。やっぱり寡黙すぎる人は、少し苦手かも。

私は話をすることが好きだし、人の笑顔が好きだから、課長とは合わないのかもしれないな。

ご飯を食べたらすぐに帰ろう。
パスタを食べ終えて、海老もしっかり食べた後、食後のコーヒーを飲みながらそう決めたところに課長がとんでもない爆弾発言をした。

「日曜日、時間があるならどこかに出かけないか？」

私はその発言に目を丸くして驚いた。
返事よりも何よりも突然すぎて、思考回路も停止する。

私と課長はただの上司と部下。
しかもまだ知り合ったばかりのほぼ他人。

むしろこうやって一緒にご飯を食べるだけでも違和感しか感じられない。
それがまさかのデート？！ダメだ。
もう頭痛がしてきた。

それなのに、誘った本人は表情一つ変えずにジッと私を見て、「どうだ？」と私の返事を待っている。

「ど、どうも何も課長と私が日曜日に出かけるという理由がよくわからないのですが……」

戸惑いを隠しきれないように言うと、なぜか課長はムッとした様子。


寡黙なくせにすぐに顔に出るからわかりやすいけれど、ムッとする意味がわからない。