「いただきまーす」

味はとびっきり美味しいというわけではないけれど、お母さんが作ってくれるような優しい味。

それにしても可愛い。崩さないように慎重に食べているとまた、クスッと目の前の課長が笑った。

課長って寡黙だけれど表情は、結構豊かなのかもしれない。
でも、なんで笑われたんだろう私。

「さっき、お前は俺がそれに興味があるのか？と聞いたな」

課長が笑っている理由は、わからなかったけれどそのまま食べ進めようとすると、課長が急に話し始めたので、私はピタッとスプーンを動かす手を止めた。

「はい」

「……俺は、お前にとても興味がある」

言われ慣れていない言葉にぶわっと頬が熱くなる。
そんな私を見て、目の前の課長は口角を上げた。

でも、私はこのとき、課長がなぜこの一言を言ったのか本当の意味がわかっていなかった。

だから、この先、私たちはただの上司と部下の関係ではなくなるなんてことも全くもって予想してもいなかった。