寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「……そうか。俺のことをまだ知らないということか。そのうち嫌でもわかる」

「言っときますけど、私はライセンスアウト反対派なので、何度来て頂いてもお断りしますから」

キッと睨みつけるようにそう言った後、「でも、スーツのことはすみませんでした」と謝ると、目の前の男性はさっきまでの無表情からクスッと笑みを浮かべた。


「やっぱり面白い奴だな、お前は。まあ頑張れ、その着ぐるみ、似合ってるぞ」


戦闘モードの私を窘めるように頭をポンポンと撫でてその男性は、出て行った。

なんなの、あの人。


頭をポンポンと撫でられたことも恥ずかしいし、似合ってると言われたこともムカっとした。
そして、なるべくならもう会いたくないと思った。