寡黙な御曹司は密かに溺愛している

「きゃあ!す、すみません。大丈夫ですか?お怪我はありませんか?秋月さん、早くどいて」

声の主は大宮さん。

早くどいて?一体何が?と状況がよくわからないでいると「あっ、そうだったわね」の言葉の後、すぽっと頭が抜かれ、見えてきた光景に絶句した。


「す、すみません!」


本当に最悪だ。

私の目に見えたものは、ほわっとニャンの着ぐるみを着た私がスーツ姿の男性を押し倒しているというありえない状況。


慌てて、その人の上から退いたけれども、スーツはとても汚れていた。


「頭だけでも取っててあげなきゃと思って、戻ってきて正解だったわ。本当にすみませんでした。すぐにタオルか何かカフェから取ってきますね」


私が退いた途端、その男性は立ち上がり、スーツの汚れを叩いたけれど、あまり綺麗にはなっていない。

急いでカフェまで大宮さんがタオルを取りに行って、私はその場でただ必死に頭を下げた。