玄関の壁に飾られているのは、畳3枚ほどの大きな絵。
何をモチーフにしてあるのかはわからない。
こういう芸術って、わかる人にはわかるんだろうな。

あの頃はこの絵を毎日見てたんだっけ。
こうやって改めて見ると、やっぱり大きいな。

ようやく、懐かしいという感情が心の奥から湧いてくる。

「萩花。待っていたぞ」

「萩花さん。おかえりなさい」

久しぶりの声に一気に感情が高ぶる。

「旦那様!早苗さん!」

私を出迎えてくれたのは、この家の主であり、私からすると社長でもある飯盛哲平さん。
そしてその妻である早苗さん。
早苗さんには、“老けちゃうから奥様とは呼ばないで”と、固く禁止されている。

相変わらず2人とも元気そう。そんな顔を見られて安心した。