いつか、感謝の気持ちを示せたらいいなと思って、旦那様の経営する会社で必死に働いてきた。
それくらいしか、恩を返す方法を知らなかったから。

でも…。
拓斗くんの結婚が、皆の望んでいることなら…。
私なんかじゃ拓斗くんの妻として力量不足だとは思うけど、それでも何かできることがあるのだとしたら。

結婚することで、今までの恩が少しでも返せるのなら…。

「私、拓斗くんと結婚し…」

「そう急がなくてもいい」

「…でも」

「もちろん、俺との結婚をただ拒否されるのは嫌だ。

だからって、情で結婚を決められるのも面白くない。

萩花には、ちゃんと俺を好きになってほしい」

じっと見つめられると、返す言葉も見つからない。

自分の浅はかな発言が恥ずかしくなる。
私は何度、彼のふとした正論に打ちのめされれば学習するんだろう。