婚姻届と不埒な同棲

「で、なんで急に結婚なんて言い出したの?」

「いいじゃん。

どうせ萩花のことだから仕事ばっかして嫁の貰い手なんてねーんだろ?

俺が貰ってやるって言ってんの」

あーあ、怒りを鎮めて損した。

「どの口がそんなこと言ってるのよ。
段ボールに詰めてドイツに送るよ?」

頬をつまんで、ぱちんと離してやる。
昔はよくこうやって叱ってた。

「えー?
婚姻届書けばいいだけじゃん」

「書くわけないでしょ。

大体、私だって何も無い訳じゃないんだからね」

「…あぁ。知ってる。

急に帰国させたのは、まぁ、悪かったと思ってる。少しだけ。

俺も焦ってたんだよ。
…ドイツで、萩花とどっかの男の見合いの話があがってるって父さんから聞いて、いてもたってもいられなくなった」

お見合い?

あれはそんな正式なものじゃない。
ただ、上司から男性を紹介されて、会ってみようかなと思っただけ。

結局会う前に帰国したから何も話は進んでない。