婚姻届と不埒な同棲

「萩花?」

ボロボロと涙がこぼれる。

本当はこんなにも家族を求めていたなんて、今まで気付かなかった。

それからは泣きに泣いた。

涙が落ち着いたときには、目のまわりがヒリヒリ痛んだ。

「…もう大丈夫。ありがとう」

なんか、今まで散々偉そうに物を教えてたのに、急に声をあげて泣くなんて、恥ずかしくなってきた。

よりにもよって拓斗くんの前なんて、1番駄目じゃん。
どうにかして、なかったことにしたかった。

「さっきの話、弟ってことならいいかもね」

精一杯の誤魔化し。

拓斗くんはキョトンとしたけど、すぐに察してくれたらしい。

「なんで弟なんだよ」

「じゃ、お兄さん?
それはないでしょ」

「ったく、今は弟で我慢しておいてやるよ」

この時の拓斗くんの悔しそうで照れたような、何とも言えない表情は絶対忘れない。
貴重なその表情を見ることができて、きゅんときたのは誰にも言わないでおこう。