勝てそうにないなって思ったんだ。」

ひろくんの視線はまっすぐ私を捕らえてい

て。私は分かってしまったんだ。ひろくん

の好きな人を。

「つぼみのことが好きです。」

その告白は、小さくて儚いけれど、確かに

想いを乗せていた。

私は最低だ。望夢のことばかり考えていて

周りの人の気持ちを考えていなかった。ひ

ろくんの気持ちも知らずに、望夢が生きて

いた証を押し付けようとした。

「ひろくん…。私、何も知らずに傷つけて

いたなんて…。ごめんなさい…。」

自分の無神経さに怒りを感じた。そして、

どんなに苦しくても、もう望夢の温かい腕

はどこにもないんだと思い知った。