そして、頭の中には最悪の考えが思い浮かんだ。
ひょっとして、奏君は私に恋愛感情を持っていたことは一度もなかったのじゃないかって。
桜庭さんに見せていたあんなに楽しそうな笑顔も、
連絡先を聞かれたことも、
私には一度もなかった。
瞬間、頭の中が真っ黒になった。
……やばい。泣きそう。
奏君だって目の前にいるのに。
今泣いたら奏君だってきっと迷惑に違いない。
心ではそう思っているものの、感情を抑えきることは難しかった。
その時、
「ちょっと杏奈。トイレ着いてきて」
という未希のが聞こえたかと思うと、未希に腕を引っ張られて、視界から奏君が消えた。
