悪役は恋しちゃだめですか?



「って、あれ?桜庭は?」


私の髪を直した後、奏君は桜庭さんの方に視線を戻したけれど、そこには桜庭さんはいなかった。



「いなくなっちゃった」


周りに桜庭さんがいないことが分かると寂しそうに奏君は呟いた。


え、なんで寂しそうにしてるの?

あ、そっか。
歴史の話が楽しかったからか。


なんて自分を納得させるような理由を出してはみたものの、どうしても違和感は拭えきれずにいた。



「じゃあ俺教室戻るわ。じゃあな」



私はカバンを持って教室を出ているから、もう帰るのだと思ったのだろう。

別にそう言われていいのだけども……。


少しくらい、桜庭さんみたいに会話続けてくれたっていいじゃん。



「坂井?」



なかなか返事が返ってこないことを不思議に思ったのだろう。

奏君は私と目線を合わせるために、少し腰を曲げて目を合わせてきた。



「うん。ばいばい」



なんか、これ以上この場にいるといたたまれなく感じる。



そう思って奏君の返事を聞く前に背を向けて帰った。