小さい頃から薬品の匂いが好きだった。

鼻をツンと刺す、独特の香り。

父が勤めていた病院でその香りを嗅ぐ、

その時がとても好きだった事を今でも鮮明に覚えている。



その父が他界した時。

その時も、香りは涙と共にあった。

僕はひとりになった事をぼんやり実感出来ないまま、

何故か僕より嗚咽をあげて涙を零す君の横顔だけをじっと見ていた。





やくひんのかほりだ。