ヒキガエルの話はこうでした。


カエルたちにはお殿様がいて、すべてのカエルを治めているのだそうです。
今のお殿様はトノサマガエル。ウサギと相撲をして勝ったという立派なカエルです。


お殿様というのは、お正月のくじ引きで決まります。
次のお殿様になりたいカエルはくじを引き、当たりを手にした者が新しいお殿様になるのです。
毎年、俳句が得意なダルマガエル、気象予報士のアマガエル、お相撲さんのウシガエルがクジを引きにやってきます。


「ところが、何年やっても、どんな順番で引いても、必ずトノサマガエルが当たるのです」


ナギがきょとんとして言いました。


「やっぱり、トノサマガエルだからお殿様って決まっているの?」


「いいえ、くじは平等です。今年もトノサマガエルがくじを当てました。しかし、あまりにもトノサマガエルが当たり続けるので、他のカエルが『ズルをしているんじゃないか』と文句を言い始めたのです。くじをやり直そうと騒ぎ立てまして、困っています」


「ううん」と、アラシが首をかしげます。


「どんなくじ引きなんですか?」


「箱に木の棒を入れておくのです。そのうち、印のついた一本を引けば当たりです。もちろん、中身は見えないようにできています」


そこでヒキガエルは頭を抱えてしまいました。


「くじを作るのは私の仕事なのです。トノサマガエルに当たりを教えているんじゃないかと疑われてしまいました」


「ははあ」と、ナギが頷きます。


「それで誰がお殿様になってもいい私たちにくじを用意してもらおうとしたのね」


「そうなんです。しかし、まさか料理店だったとは」


しゅんとうなだれたヒキガエルは、かわいそうなほど落ち込んでいました。