お金がなくて。

行く場所もなければ帰る場所もない。

あたしはこれからどうすれば…

勢い任せに家を出たものの
どこへ行けば…


行く宛もなく家を飛び出す勇気がどこから出てきたのか


数分前の自分が馬鹿らしく思えてきた


お金も何も持ってきてないくせして
何故か家の鍵を持ってきてしまった
帰るつもりなんてないのに…


真夜中の東京はいつもの東京とは違った…まるで…知らないどこかにいる感覚だった。


とりあえず…どこか行かなきゃ
さすがに歩き回って1晩終えるつもりなんてない。

………


あたしは迷っていた…
最終手段使うか…いや…うぅ
最終手段と言っても家に帰るわけではない。…友達……そう。友達の家という名の逃げ場。
出来ればこれはしたくなかった
友達まで迷惑かけたくなかった…
…もうダメだ。固く決心していたはずなのに、寒さと空腹と睡魔には勝てないようだ。
唯一の持ち物とも言える携帯をポケットから取り出す。
「おっとっと」

と思わず声が出た。寒さで悴んだ手は上手く携帯を操作することが出来ず、誤って落としてしまった。


拾い上げようとしたその時

一足先にあたしの携帯は宙に浮いた
いや、正確にいうと誰かに拾われたのか…