上履きの忙しく鳴る音と共に、先生の「廊下を走るな!」という声が教室内に響くと私は空っぽになった皿を見つめた。





それから、視界が霞んだ涙の跡を私は自分の手で拭う。




ごめんね、ツトム君。それから、ありがとう。私は教室を既に駆け出してしまった彼に謝罪とお礼の言葉を返す。







ツトム君は乱暴だし、先生にもよく怒られるし、騒がしくて、でも最後は私に手を差し伸べてくれた。







ありがとう、ツトム君。







私は心の中でもう一度お礼を言って、最後のお楽しみにしていたプリンへと手を伸ばす。






「…あれ?」







だが、牛乳瓶の横に確かに置いてあった、私の月に一度の楽しみと言えるプリンが、その場所から忽然と姿を消しているのに気付く。







「あ!」







私は思い当たる犯人の人相が直ぐに思い浮かんだ。
肉食獣の様な欲望にぎらつかせる瞳、その牙の様な八重歯を持つ獰猛な人間。












隣の席のツトム君だ。