『なんかあるのかな?』と言った鈴木さん。
主任には彼女みたいな美人がお似合いだっていうことだよね。
その人は背はすらっと高くて、足なんてすごくきれいでスーツをきちんと着ているのにどこか色気がある。
大人の雰囲気で主任と並んで話をしていても、対等な関係で仕事をしていることがわかった。
私なんて…辛うじて大人っぽいスーツを着ているもののこの童顔は変えられない。
それにあくまでも営業補佐で、私はやっぱり上司と部下にしか見えないんだろうな。
ぼんやりと考えていたらいつの間にか主任が近くまで来ていた。
「天ケ瀬さん」
「は、はいっ」
「すみません、少しいいですか?」
主任に連れだされて会議室から出ると、
「鍵持ってますよね?」
「え?どこの?」
「三つ目のカギです」
え?三つ目ってことは東京の主任のお家のカギよね?
「は、い。あのまま一緒についてます」
「そうですか、ひとりで行けますか?」
この前は連れて行ってくれたけど、朔也さんに地図は前回もらってちゃんとそこまでの道順は覚えてる。
「ナビもありますから」
「八時にアヤノと約束してるんですが、一緒に行きたいので。先に帰っていてくださいね」
そこまで話をするとさっきまで主任と並んでいた美人の彼女が会議室から出て来るのが見えた。
私をじっと強い視線で見てから口元を緩めると、主任を呼んだ。
「堂地君」
その声に主任は振りかえり、彼女を確認してからもう一度こちらを向いて小さな声で
「迷子にならないようにね」と言ってから彼女のもとに戻っていった。
その時、彼女の口元がもう一度緩んで私に微笑んだ。
ドクン――
心臓が大きく音を立ててそのあとギューって強い痛みが襲ってくる。
なんか、いやだ。
彼女のその笑みはまるで私のことを下に見るようなそんな微笑み。
こんなの今までだってあった。
外回りしてる時に主任を狙ってる人も何人もいた。
でもその頃の主任は誰に対しても冷たくて、仕事の内容以外で女の人と話す事はなかった。
でも今は
彼女と話をする主任は楽しそうに笑っている。
それは私の前だけだと思ってた。
だけど、そんなことなくて……
彼女にもそうなの?
……ううん、彼女にだから?
冷徹な主任はもうどこにもいない。
仕事中でも優しく微笑む主任が普通なんだ

