彼と愛のレベル上げ

七時前に主任からメールが届いた。


『今から迎えに行きます』


元上司に宿泊しているホテルまで迎えに来させるなんてことはありえない。
ましてやそれを誰かに見られたら主任に迷惑がかかってしまう。

だから『待ち合わせ場所を指定してください』って返したらすぐに電話がかかってきた。


『モモ、』

「は、はいっ」

『そこにいてください、でないと迷子になりますよ』

「…はい」


迷子になる、たしかにそれの方がもっと迷惑がかかるという事はわかる。
結局大人しく部屋で主任を待つしかない。


ピンポーン


主任が部屋の扉の前にいるのを確認するとドアを開けた。





主任が部屋に入ってくると同時に主任の胸の中に閉じ込められた。



ずっと欲しかったぬくもり。
…そして主任の香り。


胸一杯にその匂いを吸い込み、主任のシャツにギュってしがみついた。

それだけで胸がいっぱいになる。


「……ずっとこうしていたいですけど、おなかすきましたよね?」

「え?」


あ、私一人でしがみついてた。
恥ずかしいー


シャツを握っていた手を離し、下から見上げるように主任を見る。

こめかみに優しいキスが落ちてくる。
そして主任は優しい声で、


「今日はこれで我慢します」


それだけじゃ足りなくて、もっとって思ってしまう自分がいる。


我慢なんてしないで欲しいのに、
――私は我慢なんてできないのに。


瞼をギュっと瞑り、そう言いたい気持ちをぐっと堪える。


「鍵忘れないでくださいね?忘れたら家に持ち帰りますよ?モモを」


ちょっと意地悪な顔をして主任はそう言ってから手を繋いできた。


「手ぐらいは繋いでもいいですよね?」

「え?でも…」

「迷子になりますからね、モモは」


そう言われると主任と一緒に行った水族館やお参りをした神社を思い出す。


迷子防止に繋がれていたその手。
今でも迷子防止の理由なのかな……