家に帰ってきてから望亜奈さんの言っていた事をもう一度思い出してみた。


潤兄のやってることは主任と一緒。

潤兄の気持ち……

口は悪いけどいつも優しい潤兄。その潤兄は何を考えてるのか。



―――やっぱり答えは出ない。



潤兄の事は心配だけど、私に何も言ってくれない事には何もしてあげられない。


この前も飲むぞなんて言ってたわりには、私が三杯目を飲み終えると潤兄も飲むのをやめた。

そして「今日は疲れてるから帰ってゆっくりしろ」なんていってタクシーでうちまで送ってくれた。


やっぱり私じゃ頼りにならないから打ち明けてくれないのかな?


望亜奈さんとは想い人がいるなんて話も出るのに。

確かに、望亜奈さんみたいに人生経験豊富じゃないし、美人で大人っぽくもないし。
恋人と呼べる人も片手で十分足りるぐらいしかいないかったけれども……



はぁー



私がいくら考えても、悩んでも。
潤兄の悩みはわからないし
どうにもしてあげられないから


こういうのもさり気なくわかる大人になりたいんだけどな。


でも、そんなのは私にはまだまだ程遠いらしい。



いつか、潤兄の悩みが解消されて

そして想い人と一緒にいる潤兄に会えたらいいな。



そんな事を思いながら、主任のお家の(いや今では自分の家にもなるんだけれど)お風呂に入っていた。

主任のお家のお風呂は、主任だって手足伸び伸びで入れるぐらい広くて快適。

ん?主任だってノビノビ?


そう思った瞬間主任のその姿が浮かんできて、慌てて頭の上の妄想を払って打ち消す。


「ちょ、なんでそんなの浮かんでくるのっ」


だってその妄想に出てきた主任はもちろん裸で、だから色気なんて駄々漏れで……

あぁああああ、もうっ

私って欲求不満?


「もうっ消えてってばっ」


そう思いながら目をつぶればやっぱり主任が浮かんできてしまって、今度は打ち消す事が出来ない。


「主任。――ジュンさん。……会いたいよ……」


そう口にしてしまった後で目をギュって強く瞑って涙をこらえる。


待つって決めたんだから。

潤兄にだって宣言した。


だから、私は涙なんて出ないようにバシャバシャと顔を洗いお風呂を出た。