「主任も周りから固めるなんて、本当に……策士ねぇ」


周りから、固める?
それってどういう?


「まさか、桃ちゃん気づいてないとか?」

「え?」

「今後の事、スムーズに進めるための策でしょ?家の事もお婆様と会うように仕向けたのも。」


は?仕向けた?


「だってあれって、お婆様が押し掛けたって……」

「だからお婆様の性格をよんでそうなるようにしたんでしょ?」


なんかそれってスゴくヤバイ人みたいじゃないですか。

だけど、考えて見たら……

うちにご挨拶に来てくれて、その時にお母さんに家を見てくれるように言って。

この間一週間ちょっと。

展開が速すぎて私が全然ついていけてなくて、あっという間に住む事になってる。



「ま、そこまでしないと桃ちゃんを動かせないって分かってるのよね?きっと」

「え?私?」

「桃ちゃん、最強の鈍感娘だからね。ま、そこがかわいいんだけどね」

「それ、誉めてます?」

「もちろん。最高の誉め言葉?」


最後が疑問系だったのが気になりますけど、素直に受けとることにします。


「ま、お婆様が言うように、少し主任の事。見ていてあげたらいいんじゃないかな?」


考えて迷っているばかりじゃなくて

先ずは行動してから考える事もたまには必要ってことかな?


「うーん」

「それに、お母さん引っ越しの手続きとかもう進めちゃったんでしょう?」


望亜奈さん、良くお分かりで。

そう、あれから本当に不動産にいって最短の期日聞いて大家さんにも連絡とってもらっちゃったんだよね。


「はい……」

「だからさ、とりあえず引っ越してからまた考えよ」


流されてる感がしないでもないんですけどね?

ほんとにいいのかな?

それは、主任のおうちで帰ってくるの待っていられるのってすごく嬉しいけど。

嬉しいけど。そこに一緒にいた分一人になったらって考えると……


「引越し……」

「荷物まとめるのとか大変だよねー。一人暮らしはじめて三年経てば物も増えてるよね」

「…そう、ですね」


確かにいつの間にか増えてる気がする。

でも近所だから車で少しずつ運んで行けばなんとかなるよね。