「こんばんは」
さわやかに挨拶しつつリビングに登場したジュンさん。
潤兄の様子は……?
まったくジュンさんの方を見もしない。
大丈夫なのかな……
「お、堂地君もこっちにきて一緒に飲むかい?」
そんな事に全く気がつかないお父さんがニコニコしながらジュンさんに声をかけてる。
しかも酒の御誘い。昨日もあれだけ飲んだのにまだ足りないのかって。
「いえ、私は車ですので…」
「そうよね?桃華ちゃん、コーヒー淹れて差し上げて?」
「あ、うん」
この場から動くのはちょっと心配。
だけど潤兄だって大人なんだし、この前みたいな事はもうないよね?
コーヒーの雫が落ちるのがいつもよりも遅く感じる。
そんなのは気のせいだってわかってる。
でもやっぱりリビングの様子が気になるから早く戻りたい。
ジュンさんの好みにコーヒーを淹れ、リビングに急ぐ。
部屋に入ると、お母さんとジュンさんの話声が聞こえてきた。
「それじゃあ、日の出見てお参りしたら堂地さんは帰るの?」
「はい、祖母も一人ですから」
「あぁそうよね?富貴子さんおひとりなんて寂しいわよね」
「いえ、寂しいというよりはお節を食べろと…」
「…まぁ、そうなのね?富貴子さんのお節おいしそうね」
「あぁお持ちすればよかったですね」
「あら、そんなつもりで言ったんじゃないわよ?」
そこで話の区切りがよさそうだったのでトレイに乗せたコーヒーをジュンさんの前に置いた。
「はい、ジュンさん。お待たせしました」
「ありがとう」と言ってすぐに口をつけるジュンさん。
「やっぱりモモの淹れるコーヒーはおいしいですね?」
この言葉はジュンさんが同じ事務所に居る頃から言われていた。
だけど何度言われてもやっぱり嬉しい。
「桃はお茶をいれるのだけは上手だよな?」
今まで全く会話に入っていなかった潤兄が急に会話に入ってきた。
だけど、言ってる事は相変わらずで……
「ちょっとっ潤兄っ。だけっていうのは余計ですっ」
「じゃ三ヶ月後、お料理も得意なんですって言えんだろ?」
ニヤリと笑って言った潤兄に「当たり前でしょ?」と大声で言い返してた。
あ。もしかして、まんまと乗せられた?

