「いや、あのっ変な事言ったっていうか、したっていうか……」

「はぁ?!何っされたのっ?!」


いや、あの。声大きいです。

隣のお姉さん、思いっきりこっち見てます。


「あの、ほんと、不意打ちっていうか、不可抗力っていうか…」

「だからっ、なにっ?!」


怖いです、望亜奈さん。

綺麗な人が睨みを利かせるとかなり怖い。


「早くっ桃ちゃん。言いなさいよっ場合によっては私も黙ってないわよ?」

「あーなんか、潤にぃが珍しく自分からコーヒー飲みたいって言うから家に入れたんですよ」

「帰ってきてからの、遅い時間に?」

「はい……」


確かにそう言われても仕方のない時間。

だけど潤兄だったから私は快く招き入れたんだけど。


「それで?」

「えと、その急に抱きしめられて『あきらめるならとっくに十八の時にしてた』とかなんとか……」

「それだけ?じゃないわよね?」



ギクッ―――


鋭すぎる望亜奈さん。


「あの……


潤兄にキスされた。

気持ちには答えられないのに、それが嫌じゃなかった。


「いくら初恋の人でも、無理にされたのに、嫌じゃないなんておかしいですよね?」

「んー……」

「私にはジュンさんというれっきとした恋人がいるんですよ?」

「まぁ、そうだけど…」

「あの時、もしかしたら顔を伏せればそんな事にならなかったかもしれないのに」

「でも、それは不可抗力でしょう?それに…私も初恋の人に再会したらキスぐらいはしてみたいわよっ」

「ちょ、それっ浮気っ?」


自分で言ったその言葉に驚いた。

そうだ、私のした事は浮気と一緒だ。


「そう言ったら身も蓋もないけど…起きてしまった事は仕方がない事でしょう?」

「…そう、ですけど。でも、」

「相良さんも強行手段どころか、強行突破ね…まったく大人げない」

「…どうしたら、いいんでしょうか私。」


どうしていいかわからない。


「んー…あのさ。桃ちゃん、相良さんの事好きなの?」

「え?あのっあくまでイトコっていうかお兄ちゃんみたいな気持では好きです」

「じゃ、主任のことは?」

「もちろん好きです。いえ、あの。…好きのもっとずっと先の気持ちです」

「答え、見つかったのね?」


目を輝かせて質問してくる望亜奈さん。