彼と愛のレベル上げ




「へぇー、来たんだ」

「ちょ、潤にぃ、何言って――」

「モモ、おつかれさま」


主任はそう言って私に微笑み、手を伸ばす。

まるで潤兄なんて目に入っていないかのように……


横にいる潤兄を見上げるけど、じっと主任を見たまま。

っていうか、睨んでる、よね……


そんな潤兄の視線なんて微塵も感じてないかのように主任は私の手を取り強く握ってきた。


「帰りますよ、モモ」

「え、あのっ…


だって隣には潤兄がいて

それでもって潤兄は主任に話があるって言ってて


「勝手に帰んないでくれる?」


……!


低い声で潤兄が言う。

もちろん、潤兄を見もせずに存在さえもないかのようにふるまう主任に対して言ってるってことがわかる。

強く手を引かれて私を横に並ぶようにしたあとやっと潤兄の方を向いて


「先日お会いした時に、後日改めてと言ったはずですが?」


冷ややかに主任が言う。


ピクリと片眉が上がった潤兄。


目の前にいる潤兄と横にいる主任を交互に見上げながら、ハラハラしながら見守るしかない自分がもどかしい。

でも今ここで私が何か言った所で状況は……


「では、改めて明日か明後日にお時間いただきたいんですがいかがですか?」


急に丁寧な言葉で言い直した潤兄。


「え?潤にぃ、明日か明後日って…?」


潤兄の言葉にうっかり口を挟んでしまった私。

だって、それって東京にその間いるってことでしょう?

何のために?



主任は大きくため息をつくと、


「普段会えない分、モモとは出来るだけ長い時間を過ごしたいんですが」


きゅっと握られていた手に力を込められる。

それと同時に胸もギュって掴まれたみたいに切なくなった。


そして主任がまっすぐと潤兄を見て、


「では日曜の五時にここで、先日のお約束通り夕飯でも?」

「へぇ、桃を送って帰るのは容認なんだ?」


攻撃的な発言をする潤兄。

なんで?!


「ええ、“いとこのお兄さん”に送っていただいた方が安全ですしね」


主任、今『いとこの』って所、すごく強調してたよね?


あぁなにこれ。

主任まで潤兄の挑発するような言葉に応戦し始めちゃってる!