今日も仕事帰りにお婆様の家に向かう。

向かうというか……

玄関の鍵を開けて中に入り、リビングに行くとそこにはお婆様がいる。


「おかえりさない、桃華ちゃん」


そう言って温かく迎えてくれる。







月に一度のお料理会だけでなく、御夕飯の時間にもご一緒してお料理を教えて欲しいとお願いするとお婆様は快諾してくれた。しかも、


「うちはお部屋も余ってるし、ここに住んでくれてもいいのよ?ほら、そしたら御夕飯と言わず、朝も一緒にいただけるしね?」

「富貴子さん、さすがにそれはモモが息が詰まります」


なんてこと言うんですか、主任は。

でもたしかに、私のお寝坊の所とか見られるのはさすがに。


「だって純哉の部屋はせまいでしょう?向こうの方が息がつまると思うわよ?」


いやいやいやいや、お婆様。
十分広いですよ?


「いえっ、あの。私にはあの部屋も広すぎるぐらいです」


それに、主任のいないあの部屋は一人では余計に広く感じてしまう。


「部屋の話しは今はいいですから。」

「あら、そうね」


急に主任への攻撃をやめるお婆様。


「モモも六時半まで仕事ですし、仕事で遅い日もありますけど」

「日々のご飯をつくるのだから凝ったものをつくるつもりはないから」

「そうですね……」


仕事帰りだし難しいことは出来ない事をやんわりと伝える主任。


「あのっ、ご迷惑じゃないですか?」

「だから私は、住んでくれてもいいぐらいって――」
「富貴子さんっ」


またさっきの話のループになりそうで、それを主任がとめてるけど。

なんていうかお婆様もわざとそういう風にしているみたいに見える。

ちょっとお茶目さんな所もあるって最近わかった。


「一つだけ御願があるんだけどね?桃華ちゃん……




そしてお願いされたのが、





「富貴子さん、ただいま」


そう、この家に入る時に『ただいま』ということ。


「さぁ、早く手を洗って。今日のメニューはね?……


下ごしらえを済ませた材料を手際よく調理していく。

ほぼお婆様がしてくれてるんだけど、きちんと作り方も食べながら教えてくれる。

それに誰かと一緒に食べるご飯はそれだけでおいしい。