「モモは欲がないですねぇ?」
そんな事ない。
だって、これは十分に幸せって思える証で、今この上なく幸福感を感じているのも事実。
未来の約束までしてくれて……
「これはあくまで虫よけですから、石がついているのを今度一緒に選びに行きましょうね」
石がついているもの?
「いや、あのっこれで十分デス」
「本当に欲のない。……
掴まれていた左手をそのまま引かれると、主任の腕の中におさまってしまう。
いつのまにかぴたりと形の合うようになった主任の胸の中。
自然に主任の腰に手をまわし、胸一杯に主任の香りを吸い込む。
私とは少し違って香るボディーソープのその香り。
あぁこの瞬間にもすごく幸せだって感じさせてくれる。
「ほんとに、これも見せるのがもったいないぐらいです」
主任の胸の中でくすって笑って、見上げると
「モモはよくても、贈らせてください。…俺のものだって証を」
まだ足りない?
こんなにも主任の事しか考えられないのに
私は、まだ主任だけのものだってちゃんと主任に伝えられていない?
出来るだけ気持ちを伝える努力はしてきた。
だけど、独占欲の強い(らしい)主任にはそれでも足りないんだ。
だったら、今私にできる事は?
「あのっ、私。」
下から見上げるようにして主任をみる。
主任の着ているパーカーにしがみつくようにして
「あの…私でよければ、ずっとジュンさんの側にいさせてください」
ずっとこの命が果てるその時まで。
自分よりももっとずっと大切なもの。
側にいられて、その人生のお手伝いを少しでもできるのなら、そんな素敵な事はない。
「でも、私。まだまだ未熟で。側にいられるようになるにはもっといっぱいがんばりますからっ」
そう言った瞬間、見上げていた頭をぐっと主任の胸に抑え込まれて
「モモは色々と自覚したほうがいいですね?」
「え、」
いっぱい頑張るだけじゃダメ?
今すぐ具体的にどう、とか?
「お風呂もご飯もしたくないならいいですけどね?あんまり可愛い事を言うとまたベッドに逆戻りですよ?」
そ、そんな。
「やっ、あの、ダメですっ」
ご飯はいいけど、お風呂はダメ。我慢できない