たった今切られた電話を握りしめたまま、今起きた事を頭の中で整理しようと考える。


時刻は十二時前。
こんな時間まで仕事?


でももしかしたら残業で……?

それにしてもこんな時間まであのビルにいられるわけない。

だったら、明日は休みだし飲みに行ってるのかも?

なるべく自分に都合のいい解釈しようと色々考える。


でも……


慌てて切られた電話。

その電話の向こうから途切れて聞こえてきたのは、

……たぶんこの前のあの女の人の声。




こんな時間に何してるの?

二人だけなの?

それなのに、なぜ電話なんてしてきたの?






「桃。大丈夫か?」


潤兄のその声に現実に引き戻された。



目の前には心配そうに私を見る潤兄。

大丈夫か?って何が?


「え?」

「顔色悪いぞ」


そんなはず、ない。

だってそんなに飲んでない……


「え、あ、大丈……」


大丈夫って言おうとしたのに。最後の言葉が声にできてなくて。

いつのまにか頬に伝ってきたのは……


「あ、れ?」

「桃?何で泣いてんだよ!」


潤兄にガシっと掴まれた肩。

頭の中が真っ白で、何で泣いてるかなんて聞かれたって勝手に出てきてる涙徳勇なんて私もわからない。

それぐらい突然過ぎて
今の状況を把握できなくて

何なんだろう?


「桃?」


急に力が抜けてその場に座りこみそうになったその時、





肩に掴んでいたその手が離れ





――――強い力で引き寄せられてた。





カタン――




手から落ちた携帯。

強い力で引き寄せられたのは潤兄の腕の中。