「やだ、桃ちゃんたら自覚ないの?」

「色気なんてあるわけないじゃないですか。私ですよ?」


こんな言い方も、情けないけど事実なんだから仕方がない。
むしろ望亜奈さんこそ、何言ってるのって感じ。


「愛されてるとやっぱり違うのよねー」


色気だとか愛されてるだとか…
今度は何の話?


「…変な意味じゃないからね?」


そう前置きをしてから望亜奈さんは話し出す。


「色んな意味でね。主任から愛情たっぷり注がれてるのが、わかるのよ。内側から滲み出てきてるって言うのかな?桃ちゃん主任に一杯愛されてるでしょう?」


一杯愛されてるって……
その言葉を聞いた瞬間、主任の表情や甘く囁かれてた時を思い出して一気に恥ずかしくなる。


「赤くなられるとこっちも恥ずかしくなるんだけど。でもね、心だけ繋がっていても難しいと思うのよ、やっぱり全部欲しくなるでしょう?それで、桃ちゃん見てたらそれを主任はちゃーんと満たしてくれてるんだなぁって思ったわけ」


心だけじゃなくて全部満たしてくれてる


「えと……そう、なんでしょうか」

「いやいや、私は見たわけじゃないからね?心も体も満たされてるんじゃないのかな?って思っただけよ?」


心も体も?
っていうか体も満たされてるって……。

かーって顔が熱くなってくる。
望亜奈さんたら急に何言い出すんですかっ


「や、あのっ」

「いいんだってば。子供じゃないんだしさ。大体離れてるんだから、会った時はそりゃね?」


そんなことまで言い出してくるから、これ以上その話が続けられないように叫ぶ。


「望亜奈さんっ」

「はは、ごめん、ごめん。いいじゃない?主任に愛されてるんだから」


愛されてる、のかな?
そんな言葉聞いたことないし、私自体愛することの本当の意味を理解していない。

今時高校生でも愛してるなんて普通に言うみたいだけど私は…
理解できていない以上その言葉は簡単に使えない。


「よくわかんないですけど……」

「はぁ、本当に主任も大変ねぇ?」

「え?」

「ま、そこがいい所でもあるから、それはそれでいいのか。主任は」


なんかよくわかんないけど、納得してくれたみたいだからいいか。