『何かあったんだろ?』

馨さんのズバリな問いにまた心が痛む

『話してみろよ』

ここで話たら、きっと正ちゃんに筒抜け

わかっていた

忘れようと思ってたのにまた思い出してしまう

口に出したら、それはまた私の心に残る

いつまでも忘れられない

バイトを辞めよう

そしたら何もかも変わるかもしれない

『バイト辞めようと思ってるんだよね』

『何で?』

あなたは気まずいこの関係に何も感じていないの?

大人になったらそんなのは感じなくなるわけ?

『このままだと自分が嫌になるから』

『は?』

まだわかっていないの?

鈍感なの?

もう構わないで

あなたの顔も見たくない

優しい声が私を苛立たせる

待っていたはずの声を嫌がろうと必死に言葉に出していた

『俺のせいか?』

私は何も言わなかった

正ちゃんだって原因の一つ

心と体を奪われた私は自分で抜け出すしか方法がないと思った

『千穂が辞めたら寂しくなるよ』

嘘つき

そんなわけないじゃない

心の中では笑ってるんでしょ?

『とにかく会って話そうよ』

『会いたくない』

『バイトでは顔を合わせてるのに?』

『だから辞めるって』

『俺は寂しくても構わないの?』

堂々巡りだった

何も変わらない