馨さんが旅立った
あの日から数ヶ月

桜の季節が訪れた

私は馨さんが
見たがっていた桜を
窓から眺めていた

満開の桜

ヒラヒラと花びらが
舞っていた

『墓参りに行こうか』

コーヒーの入った
マグカップを私に
差し出しながら
大介が言った

『桜の花を墓前に
持って行く』

私は大介を見つめた

私が行きたいと思った
タイミングと大介の
タイミングが合った

偶然だとしても
奇跡だと思いたい

私は目立つような
桜色のワンピースに
着替えた

こうしたら、ちゃんと
馨さんに気付いて
もらえると思ったから

私の存在を
見て欲しかった

この日の為に
用意したワンピース