『ちゃんと幸せに
ならないと、迎えに
来てやらないからな』

そう言って私の
頭をなでた

『先生にちゃんと
千穂の事をお願い
しておいたからね』

私は頷くしか
出来なかった

どんどん涙が
溢れ出てきていた

馨さんの顔も
まともに見えない

『最後に千穂の顔を
見る事が出来て
本当に良かったよ』

『私も会えて良かった』

もう一度深く唇を重ねた

『千穂…愛してるよ』

馨さんが私の手を
ギュッと握った

あまり力も入らない
手だけど、必死に
私の手を握って
いるのが伝わる

『私も愛してる』

『俺の分もしっかり
生きるんだよ』

『うん。ちゃんと
生きていく』

『俺、幸せだよ。
最高に幸せだよ』

本当に最後のキスをした

深い深いキスをした

馨さんの唇の温かさを
胸に刻んだ

握る手から、ゆっくり
力が抜けていった

『眠くなったよ…』

『もう行くね』

『さよなら、千穂』

『さよなら、馨さん』