今日は正ちゃんが来ていない

バイトは遅番

馨さんと一緒だった

あれからあまり会話を交わしていなかった

『乗ってく?』

馨さんからの誘い

『遠慮しとく』

素っ気ない態度をとった

馨さんが悲しそうな目で私を見た

そんな目をしないで

流されてしまうから

そんなに見つめないで

お願いだから…

抜け出せなくなるような予感がしていた

私なんかを見つめてちゃダメだよ、馨さん

馨さんは車に乗っても発進せずにいた

まるで私を待っているかのように

視線が突き刺さるのがよくわかった

運転席からの視線が一度車の前を通り過ぎた私を振り返らせて惹きつけさせた

私は助手席に乗った

馨さんは何も言わず車を走らせた

『ねぇ…』

無言に耐えきれなくて私から口を開いた

『ん?』

馨さんは私の問いかけに視線を前に向けたまま
返事をした

『私はおもちゃじゃないんだよ』

『わかってるよ』

『じゃあ何でこんな…』

馨さんがタバコに火をつけたライターの音で会話は遮られた

結局、馨さんの家に来てまた上がってしまった

前のように大きなお風呂に入った

そしてまたバスローブに身を包んだ