待ち合わせをした
ホテルの部屋

私を出迎えた馨さんは
優しい笑顔を見せた

私は何も言わず
ただ抱きついた

自然にこぼれる涙

今ここにある
愛しい人の体は
もうすぐ手の届かない
所へ逝ってしまう

信じられない

今こんなに温かいのに

こんなにも強く私を
抱きしめてくれて
いるのに

『どうしたんだ?』

あまりにも私が
離れないからか
馨さんが不思議そうな
顔で私を覗き込んだ

私はこらえきれずに
声をあげて泣いた

小さな子供が親に
すがりついて泣くように私は泣いていた

困ったような表情を
見せながら、私の頭を
撫でていた

それでも私の涙は
止まる事はなかった