店が忙しい時期になると必ず手伝いに来る男の人が居た

その人は、昼間は普通の営業マンだった

夜になると店に手伝いに現れる

人なつっこい性格の人で私にもたくさん話しかけてくれた

その人と仲良くなって携帯番号を交換した

たまにしか現れないその人と電話でたくさん話した

いつの間にか、その人は私を”千穂“と呼び私は彼を”正ちゃん“と呼ぶようになっていた

正ちゃんに食事に誘われて、その後にドライブをしていた

正ちゃんが突然

『あの人とやったの?』

あの人とは馨さんの事だった

馨さんと正ちゃんは昔からの知り合いらしかった

『まさかぁ!』

何も悟られないように明るく答えた

私の答えに正ちゃんは笑いながら

『あの人はやめとけ』

と言った

そして、その目は厳しくなっていた

『何かあるの?』

『あの人は許嫁が居るんだ。それでも他の女を求めてる。ただ遊びたいだけなんだよ』

あの豪邸からいって馨さんのお父さんは会社の社長か何かだろうという事は想像がついていた

『なんとなく、あの人が千穂を狙ってそうな気がしたからさ』

正ちゃんはハンドルを握りながら、遠くを見た

ただの正ちゃんの勘なのかそれとも馨さんに何か聞いたのか

私には全くわからなかった