どしゃぶりの中
私の元に向かって走る
馨さんの姿は
私の心を揺るがした

『千穂を失うのが
怖くてたまらなかった。だから、ついタクシー
から降りてしまった。
遊びだけなら
そんな事しないよ。
今の俺は前とは
違うから。信じて。
俺を捨てないでくれ』

私を真剣に見ている
馨さんを見て、私は
頷いた

突き刺さるような視線は少し潤んで見えた

『もう抜け出せないよ』

そう言った私を見て
馨さんに笑顔が戻った

『でも、私たちには
未来はないんだよ。
お互い割り切らないと』

私は現実的な話をした

『俺は千穂の存在を
感じられるだけでいい。このまま離れるのだけは絶対イヤだ』

馨さんのこんな話し方を初めて見た

こんなにも私を
必要としてくれている

私を求めている