『じゃあね』

タクシーを降りる私を
ただ見つめるだけの
馨さん

最後くらい、笑顔を
向けて欲しかったのに

何か言ってよ…

これで終わりに
なるんだよ…

タクシーはドアを
閉めて発進した

一つ目の角を曲がるまで見送る

その角を曲がったら…

私の思いは終わる

長かった迷路を
やっと抜け出せる

なのに…

そう決めたのに…

曲がるはずのタクシーがハザードをあげた

そしてタクシーから
馨さんが降りた