『待った?』

『うん。すごく待った。来ないかと思った』

馨さんは少しだけ
不機嫌そうに答えた

私を待ってくれて
いたんだ

浩太さんのおかげで
心に余裕が出来ていた

私はシガレットケースとハンカチをバッグから
取り出して座った

早速アルコールが
目の前に出された

乾杯と言うように
持ったグラスを少し
顔の前まで持ち上げて
2人で同時にグラスに
口を付けて、乾いた喉にビールを流し込んだ

料理が一通り
出されるまで私たちは
他愛もない話をしていた

お店の人が、個室に
出入りしなくなってから馨さんがタバコに
火をつけて、ゆっくり
煙を吐き出した

『正から聞いたよ。
男が出来たんだって?』

馨さんは私の目を
見ていなかった

タバコの火種に目を
向けたままだった

『だったら何なの?』

私も馨さんの目を
見ないまま言った

手が少し震えた

緊張気味に話していた

馨さんがどんな反応を
してくるのか怖かった