『誰にも言わないで
もらえませんか?』

『もちろんだよ!
大丈夫。心配しないで』

『ありがとう』

いい人そうで良かった

人は見かけによらない

『辛くないの?』

浩太さんの質問に
私は戸惑った

辛くないと言えば
嘘になるから

でも辛いと口に出したらもっと辛くなる

しかも初めて会った人に話す内容でもない

『大丈夫です』

強がりを言った

『俺、本当に誰にも
言わないけど、お願いがあるんだ。アドレス
教えてくれない?
千穂ちゃんを放って
おけないよ』

交換条件かよ

そしたら誰にも
言わないなんて

放っておけないなんて
軽く言わないで欲しい

簡単に抜け出せる

そんなんじゃないのに

それでも正ちゃんとの
関係がバレるよりは
まだましかもしれない

私のアドレスくらいで
いいのなら、いくらでも

そして、私はアドレスを教えた

そうせざるおえなかった

その場において
断るなんて出来なかった

みんなが飲んでる場所にようやく戻って
飲み直した

いつもより、お酒が
進んでいた