『はっきり言うなよ』

『じゃあしてないって
言えばいいの?
わかってるくせに』

『そう苛つくなよ』

“あなが居るからよ”

そう言いたい言葉を
飲み込んだ

言っても軽く流される

そうなる事を
わかってるから言えない

『こんな私でも
抱きたいと思うの?』

『もちろん。俺は
千穂が好きだからな』

そんな事を言われても
私は信じない

『その好きは本気じゃ
ないじゃない!』

言ってしまった

言っちゃいけない言葉を

大介の手を自ら離した今

どうでもよくなってた

私の感情は消えていた

『俺もわかんねぇ。
でも千穂を失う事は
考えらんねぇよ』

馨さんは私を強く
抱きしめた

初めてだった

初めて馨さんの感情的な部分を見た

私を抱きしめる手が
いつもより強くて
痛かった…心が…痛い