『大ちゃんがちゅき』

『ちいちゃんがちゅき』

まだ私達は4歳だった

幼稚園に入ったばかり

いつも手を繋いでいた

いつも隣に並んでいた

いつも笑い合っていた




私の名前は“山下千穂”

彼の名前は“藤田大介”

私達は幼稚園の友達が見ているその目の前で結婚の約束を交わした

先生達は、私達の事を微笑ましく見ていた

『本当に仲がいいのね』

なんて言葉をかけながら

何の迷いもなかったし恐怖さえも知らなかった

この先にどんな事が待ち構えているのかもどれだけの辛い思いをするのかなんて事も想像さえ出来なかった

人を愛する事の喜びと悲しみと苦しみと痛み

まだ私達には未知の世界の遠い話だった

手を繋いで歩き回る私達の心の中には希望と夢しかなかった