「ま、迷った、だと……?」


私はだだっ広い校内を見渡して、愕然としていた。

私はどこ……? ここは誰……?


「そ、そんなまさか……あの有名な【がっこうしょにちにまよった】が実際に起こるとは……! 恐るべし、外界……!!」


やはり世界は私の外出を認めないようだ。諦めて帰ろう!

そう思って引き返そうとするも。


「ココドコー!!!」


帰り道も分からなきゃどうしようもないよね☆


「か、帰りたいよぉ……もう外出ない絶ッ対に出ない…………むっ、あれは!」


出口……ではなく、理事長室だった。

やっと着いた……。
これであとは理事長に自主退学の申請をして受諾してもらった後に帰るだけだ!

あえて二回扉を叩く。


「入ってまーす」

「な、に……!? このネタが通じる理事長がこの世にいるというのか……?!」


三回扉を叩きなおし、許可を得て入らせてもらう。


「こ、ここここんにちはしつれいします…………」


はいここでコミュ障発動〜! 知り合いや朝みたいな頭の悪い阿呆共以外もろ全員に発動するコミュ障発動〜!


「キミが今日から編入する南川さんだねー」

「は、はははいみなかわむあと申しますです……はっ!」


そうだ、なんの為のゲームキャラ憑依だ!!
この時のためだろう、私!!


「こほん。…………やっぴー☆ 今日から転校する南川無愛ちゃんデス! よろしくお願いするよ〜! 」

「え……いきなりどうしたの……?」

「まァまァ、そんなことは置いといてさァ! ボクのクラスはどこなのかなァ?」


困惑の目が痛い。でも私はこうしないとまともに会話が出来ません。


「あ、あぁ、うん。君のクラスは一組だね。イケメン揃いだから運がいいよ」


え、イケメン……? 悠さんだけで結構なんですけど。てか私人間なら誰であろうとイケメンであろうがコミュ障発動するんですけど。全く嬉しくないんですけど!


「この機会にどんどん媚び売ったらぁ?」


理事長のその目には微かな好奇心と蔑みがあった。
いや、知らんし。とりあえず物申させてくれ。


「あ、そういうのいいんで。てか私生粋のコミュ障ヒキニートなんで交流なんて無理無理ワロス。あと学校通ってる暇あったら家でゲームしてたいんで帰りたいです。帰っていいですか? 退学届貰ってもいいですか?」


理事長が唖然としている。
うん、まぁ、初対面でこんな事言われたら私だって困惑するわ。