『ど、どういう、事だよ……?』
『ぇ……? は……み、みんな? なんでここに……』
『どういう事か、聞いてんだっ!!』
『な、なんのこと? 急にどうしちゃったの、みんな? らしくないよ?』
『てめぇ、裏切ってたんだな、最初から』
『……もう良い。別れよう、サキ。いや、そっちは元からその気は無かったみたいだけどな』
『えっ……ちょっと、待ってよ!! あんたらが言うこと聞いてくれなきゃあたし、エンに見捨てられちゃうじゃない!!』
『そんなの知るか。……帰んぞ』
『お、おう……。……サキ、さすがに仲間傷つけられてまで仲良くしたいとは思えねぇわ。じゃあな』
『サキちゃん。ごめん、それはさすがにないわ……』
『サッキー……仲良しだと思ってたのに……バイバイ』
『……』
──────────
まだここまではぬるいものだった。本当の問題はその後に起きた。
“暴走族には興味ない”
と言うスタンスで龍院ほか有力暴走族に近づく女が大量に出てきたのだ。
今までに前例のないアプローチの仕方に餌食になった暴走族も少なくない。
だから今の時期に転校すると言うのはどういうことを意味するのか、答えは明白だ。
まぁでも、今転入したところで龍院は転入生を警戒はすれど近づきはしないだろう。
「あー、牽制するの面倒だなー」
大きくため息をついたところでノックが二回なった。
憂鬱な僕は少しふざけてみたくなって、トイレの扉用の回数だけ扉を叩いた転入生に「入ってまーす」と答えた。
「……!? こ…タ……る…長…世…と…のか……?!」
外から独り言のような声が聞こえたが、気にする間も無くもう一度、今度はしっかり三回扉が叩かれた。
礼儀はちゃんとしているの……かな?
「こ、ここここんにちはしつれいします…………」
うわぁー。この学校では珍しいくらいに人見知りだー。
えっと……今時の言葉で言うコミュ障だっけ?
「キミが今日から編入する南川さんだねー」
「は、はははいみなかわむあと申しますです……はっ!」
新しい尊敬語を作り出した彼女は、とっさに何かに気がついたような仕草をした。
「こほん。…………やっぴー☆ 今日から転校する南川無愛ちゃんデス! よろしくお願いするよ〜! 」
……は?
「え……いきなりどうしたの……?」
「まァまァ、そんなことは置いといてさァ! ボクのクラスはどこなのかなァ?」
えぇぇ??
なにこの子。僕の人生において一番訳が分からない……
「あ、あぁ、うん。君のクラスは一組だね。イケメン揃いだから運がいいよ」
まぁ、牽制することに変わりはない。
この頭おかしそうな態度も全部演技って可能性もある訳だし。
「この機会にどんどん媚び売ったらぁ?」
そう言うと今までの半分狂気じみた目の色が一気に据わった。
えぇ……なにこの子、もう意味わかんない……。
「あ、そういうのいいんで。てか私生粋のコミュ障ヒキニートなんで交流なんて無理無理ワロス。あと学校通ってる暇あったら家でゲームしてたいんで帰りたいです。帰っていいですか? 退学届貰ってもいいですか?」
…………え?