「おー…意外と気づかれないもんだな!」

「ミツ?何が?何が気づかれないって??」

もしかして。そんな嫌な予感が俺の思考を支配していく。
ナギは愛情表現豊か。でもだからと言って何もかも分かりやすいわけではない。
ミツもそれを嫌がることはないし、どちらかというとまんざらでもないような
顔をしていることの方が多い。

「いやー。片思い、じゃなくて、両片思い、かな?」

少し、安心した。独り身は俺だけじゃないと。
でも、それは…両片思いというのは…

「え?三月、それって…」

「辛くなんかないですよ。」

…それは嘘だ。辛いはずだ。この様子だと確信しているどころか
話が既についていそうだ。

「俺の勝手がいけないんです。」

なんか暗い空気だな!?もー、そんな大したことじゃないってーとミツが笑った。
多くは語ろうとしないが、きっと悪いと思っているのだろう。
俺と同じように。

俺の本音を言えばそりゃ八乙女と恋人になれたらと思う。
でもそれ以上にあいつは俺みたいな男なんかより、女性。
それこそマネージャーのような人がお似合いだ。
ミツもきっと同じ。自分の出る幕はないと、悟ったのかもしれない。
たとえ好きと言われようと彼らに訪れるであろう幸せを奪うことはできない。

「…そんなの関係ないと思いますよ。三月さん。」

「壮五…」

ソウが口を出すと思っていなかった。
まじか、なんて思いながら話を聞く。

「僕は環くんから告白されて。実は一回、断ろうと思ったんです。
彼の未来を僕が奪うべきではないと思ったし、ファンの事が頭によぎったのも
理由の一つです。でも彼は勇気を出して言ってくれたはずです。
環くんは、本能で動く様な子だけれど、それでも同性に告白するのはとても
勇気が必要です。嫌われたらどうしよう、とか思いません?
少なからず僕ならそう思いますから。
それに、自分に嘘はもう吐きたくなかったんです。」

だから受けたんです。とソウは言った。
なんでか気まずくなって向こうを盗み見た。彼らは話が終わったのだろう。
談笑している。

ミツはそっか。と腑に落ちた様な顔をしていた。
…これは本格的に付き合うことになるかもしれないとそんな近い未来を
見据えた。

ふとおーい、と声がかけられた。
タマだ。暇を持て余しているのだろう。退屈そうに、まだ?と口を尖らせていた。

「待たせちゃってるね!いこっか!」

百さんが駆け足で向こうに行く。それにミツ、ソウと続く。
俺もそれを見て駆けた。

「何の話をしていたのですか?」

皆着けば話の中心人物と言っても過言ではなかったナギが話しかけてくる。
すかさず、ミツが反応した。

「お前らの話ー!自分の連れてきた奴らのどこがかっこいいか!みたいな?」

咄嗟の嘘。待ってくれ。そんな事を言えば全員調子に乗る。
案の定ソウがタマに言い寄られている。
ナギもミツに対して目を輝かせながら内容を聞き出そうとしている。
あの熟年夫婦のようなRe:vale二人は普段と変わらずいちゃこらしている。
そこで気づいた。八乙女がそわそわしながらこちらを見ていることに。

内心、見られていてとても嬉しいが、それを悟られぬよう八乙女に声をかけた。

「どうした?お兄さん、どこかおかしい?」

「あっ、いや、その…和泉兄の言ってたこと、ほんと、か?
なら聞いてみたいなぁ、と思って。」

ニヤニヤしながら彼は言った。
まぁ、そんなこと言ってないからどっちみち教えないが。
こいつは俺をからかう気だったらしい。
なんたってこいつは笑いをこらえてるんだから。

「あのなぁ、言ってたとしても本人には言わねぇだろ。」

「そういうもんか?」

「そういうもんなの。全く……
お前だって言わねぇだろ?…いやお前は聞かれたら言うか…」

「おう、そうだな。」

「九条とかは?」

「悪ぃ、無理だな。」

「親」

「無理だな。」

「はっ、即答かよww」

「お前だって親には言いにくいだろ!?」

「まぁな。それに、俺から褒められても別に、だろ?」

「そんな事ない!」

八乙女が少し声を上げた。
ちょっと怒気を含んでいたようにも思った。

「お、おう…」

なんか悪いことをした気分になる。
彼は美人だからなのか、わかりやすいからか
表情が少し変わっただけで、イメージはかなり変わる。

「あ…わりぃ。その、怒鳴って。」

「いんや、大丈夫よ。」

「……お前から褒められて、嬉しくないわけない。」

「はぁ?なんで。」

「そ、それは秘密だ。」

彼の顔が赤らむ。少し可愛いな、なんて思うがすぐその思考を取り消す。
俺は彼に恋をしてはならないのだ。
ミツとナギなら想いあっている。いいじゃないか。
でも俺は…━━━━━━━━━━!

「んー?大和さん?どしたー?」

「っ、ミツ……わり。ぼーっとしてた。」

「ヤマさん何回も話しかけてんのに全然反応しなかった!」

「え゙。」

「環くん。大和さんはきっと疲れてるんだよ。ほら…あの……ね?」

「いや、それじゃあ疲れてる事しか
わかんねーよ。そーちゃん……」

「だ、だって!本人がいる手前何も言えな…」

「誰が本人だって?」

千さんがソウに向かって笑いながら言った。
…上手く、はぐらかしてくれると思う。
全く、囲われているというか守られているというか。
それが無性に嫌で、だけれど安心する。

後で主に二人、有難うと言っておこう。