僕の母親は自殺した。
すべての始まりは母さんが僕を妊娠したその瞬間。
父は子供を望まなかったらしい。

「女は女であることが一番だ」

そう言い続けていたそうだったが、そんな両親も爪が甘かった。
結局男と女、僕が出来てしまう結末を迎えた。
母は、信じていた、本当に愛し合った上で、できた子供なら、きっと大丈夫だと。

だが、それは叶わなかった。
おろす話になり始めた。

それを許さなかった、僕の祖母。
「命を簡単に殺すのかい?
第一、もう下ろすには大金がかかるじゃないか、うちの娘に手を出すだけだして、子供まで作って、責任を取らないとただじゃおかないよ」
「はい、すみません、」

母抜きで行われたその話し合いに、負けた父は結婚することにした。
それが失敗、父は女性が好きだった。

「お前はもう女ではない、母親だ」

初めは浮気、僕が生まれて3年くらいがたった頃からだったらしい、家には帰らない。

母は、それから6年間は信じていたが、そのあとは、最愛の人を失っている現実に狂い始めた。

「どうして、愛してくれないの、なぜ帰ってこないの、?

“浮気”

浮気なんてするはずない、!!!!!
あの人は私がいないと駄目なのよ!! 」

愛に溺れ、母はどんどん狂った。
狂って狂って、祖母も母のそばに寄り添ったが、母は祖母さえも憎んだ。
離婚が決まったあと、祖母と母と僕は地元を離れた。
母の気を父から遠ざける為でもあった。
だが、母は、さらに荒れ狂った。

「私なんて女でなくなったら価値がない、私はお人形??生きてるの? 見て?私生きてる!あははは!!血が出てる!あははは!もっと!もっと!もっと!」

自傷行為に走ってしまうようになった。
そしてついに精神科に入院することに。
僕は、その頃には小学6年生になっていた。
僕を見る目はいつも怖かった、あれだけ好きだった父のことも母は憎むようになっていた。


「私を捨てた、私を。私は誰からも愛されない、生きてる意味がない」
「幸ちゃんは、あの人そっくりね、
どうしてそんな目で私を見るの?

幸生、

そう、

全部あなたが生まれたせいなのよ 」

その時、母は僕を見て笑った、初めて見た。

「母さ...」
初めて母を呼ぼうとした、だが、辞めた、それから母はみるみる回復していったように見えた。
祖母も安心していた。
医師にもう大丈夫だと診断され、母と僕は二人で暮らすことになった。
祖母は僕達の家の近くに住んだ。

初めて母親と住める、嬉しかった、一緒にいるだけで家族を感じられた。僕らは血が繋がってるんだ、
会話なんてなくてもいいんだ。

でも、それから1度たりとも会話をすることは無かった。
ある日、突然、母に腕を引かれた。
それも感じたことのない強さ。
人にあれだけ強く腕を掴まれた経験なんてなかった。

どうすれば、、何もわからなかった。


「やっぱり幸ちゃんはあの人に似ているのね、
ほらちゃんと見ていて?お前が殺す私の最期を。」


そして、本当に簡単になんの躊躇もせず、母は、橋から転落して死んだ。
僕は何も出来なかった。
止めることなんてできなかった。

だって、

そんな資格、

僕は持ってない。


母は死んだ。


僕の目の前で。そして僕が殺した。