梓は“それじゃ、バイバイ―――” と言って1人で帰ってしまった。
あたしは先に図書館に入っていった“平本 蒼衣”の背中を追った。
「さっきの子はいいの?」
「梓は帰りました」
「あっそ」
ふうーん。
梓が可愛いから気にするんだ。
男って可愛い子に弱いんだ。
「梓には彼氏がいますよ」
「知ってるけど?」
「だったら梓を好きになるのは辞めておいた方がいいですよ。
梓は相当彼氏が好きみたいですから」
“月のような存在―――” と言った時の梓は彼を本当に好きなんだと思った。
あたしもそんな恋をしてみたい。
「俺はただあの子を知っているだけ。
ま、向こうは知らないと思うけど」
ふーん。
なんか変な感じ。
梓は知らなくて平本蒼衣は知っているだなんて…… もしかして
「ストーカーじゃないから」
「あっはい……」
よかった。
梓が変な人に目をつけられなくて。


