「遅いよ、ずっと待っていたんだよ!」


「ゴメン、ゴメン…」


教室に入った途端、梓に捕まった。


「もー、片付け終わったんでしょ?
昨日、平本先生が家に遊びに来て教えてくれたの」


「昨日は家に帰ったら疲れて寝てたんだよ…ゴメンね」


「それはいいんだけどね、今度一緒に買い物行こっ」



嬉しそうに目を輝かせてあたしの腕を握って誘ってくれる。


けど今は買い物へ行く気分ではない。



「しばらく用事があってダメなんだよ。また今度でいい?」


「………そっか、ゴメンね。
また一緒に行こうね」


本当は用事なんて1つもない。
ただ今は何も考えたくない。


こんな状態で梓と買い物へ行っても良いものには出会えない。


周囲の音を遮るように耳を塞いで机に突っ伏した。