普段は電子辞書。
紙辞書を引く機会は滅多にない。



「後で電子辞書で調べたら?
引きずらそうだし…」


「……………そうします」



後で電子辞書で引こう。
うん、そうしよう!


あたしは蒼衣先輩の隣の席にまた腰を下ろした。



「秋元さんって英語“も”苦手?」


「英語は苦手じゃありません!
苦手なのは国語だけです」



これじゃあ、あたしって勉強できない子みたい。
苦手なのって国語だけなのに…


はぁー
もっと勉強しよ。



「そろそろ…だね」


「何が?」


「時計、見てみな」



蒼衣先輩の長い人差し指の先にある時計はそろそろ授業終了時刻を指しそうだった。


授業の50分は長くて長くてしょうがないのに蒼衣先輩と過ごしたこの50分はあっという間だった。




「あ、そうだ。
この間言い忘れていたけど…
今日からこの間買ってきた本を本棚に並べられるようにするからちゃんと来てねだって。
兄貴からの伝言」