「あのときは、その、悪かったよ。」
チンピラの名は船水武。白鳥とはかつての戦友だったが、不祥事を起こし今はクズ同然の生活である。

「てめぇによ、謝られるくらいならぶっ殺してらぁ。」
すすり飲むように昇は日本酒を飲んだ。

「・・・あれからよ、どうなったんだ?梅沢組は。」

沈黙を縫うように昇は尋ねた。
武は情けなさを鼻で笑うように語り出した。

「ふっ、さんざんだよ。梅沢の親父は久米田の親父の組に吸収されるのが嫌で自殺した。ヒロ、シンジ、ツヨシもみんな久米田一家に入ったが、抗争で死んじまった。俺はこわくてよぉ、情けねぇよな。勢いだけ余ってた俺も抗争から逃げて今はクソ見てぇなチンピラ拾って兄貴気取り。金貸しやってるよ。」

「そうか。死ねなかったろ?」

「笑えや。あれから大変だった。毎日追われ、隠れ、逃げ、どん底だった。昔よ、付き合ってた彩が現れてな、あいつ腹にガキいたよ。幸せそうでなぁ、なんだか嬉しくて悔しかったよ。その日決めたんだ俺ぁ生き恥さらして生きてやろうってな。」

「ふっ・・お前ぇらしいな。まぁ飲めや。」

「すまねぇ。」

二人の夜は明けていった。