とっくに忘れていたその記憶が蘇ってきたのは、23歳のある日だった。


僕はその日ポストの中に一通の手紙が入っているのを見つける。


一人でいることの多い僕に個人的な手紙が来るというのはほとんどない。


そのせいか青い封筒に丁寧な字で『望月 渡様』と書かれた手紙を一瞬何かの間違いかと疑った。


恐る恐る差出人を見る。そこに書かれた名はーーー『栗山 花乃』。


その名前を見てすっかり忘れていた中学生時代の記憶が鮮明に思い出される。


何故こんなにも長い間忘れていたのだろう。


栗山花乃は13歳の夏、あの約束を交わした少女だった。