無視してランチを黙々と食べる。


「うーん、まあ美人。俺もアリかな。」

「副社長っていくつ?」

「30。」

「大人だ。どんな彼女か興味ある。」

「あるある。やっぱりデートとか夜景の見えるバーとか。大人な雰囲気なのかな。」


結衣と鈴乃の妄想が凄い。

副社長は30だし、大人な感じではある。

入社式で見た副社長の印象が強い同期には大人の男性というイメージに違いない。


「私とは釣り合わないよね。」

「うん、無理。」


結衣と鈴乃の言葉に二人を交互に見た。


「あんな素敵な人の彼女なんて荷が重そう。」

「彼女歴も凄そう。やっぱり令嬢とか?岬くんも彼女は令嬢とかなの?」


『釣り合わない。』


鈴乃の言葉が胸に突き刺さった。

そんな事は考えなかった。

カフェで出逢った私達は会社で見た慈英とは別人のように普通の男性に見えていた。

カフェでコーヒーを頼むスーツ姿のビジネスマンでしかなかった。

でも結衣と鈴乃にとって、初めから副社長である慈英しか知らない。