前に座る賢を見た。

確かに黒髪にしているが、雰囲気がチャラい感じから抜けてない。

明るく誰とでも話すから軽いイメージが植えつけられたのだろう。


「心菜、何?」

「確かに賢の彼女になったら大変そう。」

「何で?」

「誰にでも優しい男だから、自分だけを好きなのか不安になりそうだし。」


賢は人当たりが良いから、誰にでも優しい。

それって彼女からしたら不安材料になると思う。


「心菜は知らないだろうけど、兄貴も誰にでも優しいから。」

「…………。」

「兄貴って副社長?」


賢に答えたのは私ではない。

興味津々の鈴乃だ。

同期はランチの手を止めて賢を見ている。


「副社長も優しい人なんだ。モテそうだよね。」

「彼女とかいるの?」

「いるみたい。」


賢の爆弾発言に同期が喰いつく。


「副社長の彼女って?」

「やっぱり美人?秘書課の岬さんみたいな感じか?」

「社内の人?」


質問が一斉に飛び交う。